入院闘病記(閉鎖病棟) PR

入院闘病記(閉鎖病棟) オナニーを強要してくる謎の声 第2話

翌朝、保護室の鉄の扉が開く金属音で、僕は目を覚ました。

昨日、僕をこの部屋へ連れてきてくれた、看護師の山下徹さんが、部屋の中へ顔を覗かせた。

「ひでまるさん、朝だよ。どう?落ち着いた?これから色々と、入院生活についての説明があるから、ナースステーションに来てくれる?」

ナースステーションは、保護室のすぐ右隣にあった。僕は山下さんに連れられて、ナースステーションへと入った。

ナースステーション内は、六畳位の狭苦しい所だった。その中を、ピンクの制服を着た看護師のお姉さんたちが、忙しそうに動き回っていた。

何故か、皆、美人だった。

何故だろう……。

部屋の中央に、木製の簡素な机が置かれており、その後ろに池田先生が座っていた。池田先生は僕に、机の前の椅子に座る様に促した。

「調子はどうですか?昨夜は良く眠れましたか?」

僕はここぞとばかりに、先生に食らいついた。

「先生!僕は病気ではありません!日本国政府に、圧力を掛けられているんです!本当です!今から家に帰らせてもらいます!」

「まあそう興奮しないで、もう少し落ち着くまで、二三日病院でゆっくりして行きましょう」

「嫌だ!僕は帰る!ここから出せ!」

僕はナースステーション内で、泣きわめき暴れた。

「分かりました。三日経ってひでまるさんが落ち着いたら、家に帰りましょう。約束します」

「本当ですね?先生!三日ですよ!」

「はい。約束します」

診察が終わり、僕は保護室へと戻された。

ガチャン、という鉄の扉の鍵を掛ける音が、僕を絶望の淵へと追い込んだ。僕は、白いコンクリートの四角い箱の中で、一日中泣いた。感覚が麻痺してきて、朝だか夜だか分からなくなってきた。僕は泣いて泣いて泣き疲れると、ただ天井をあてども無く、ぼーっと見上げた。

その時だった!

また、あの謎の声が聴こえてきた。声は、病室の壁の外から聴こえてきた。

「早くオチンチン、大きくして!」

「寝る前に、早くオナニー済ませちゃいなさい!」

「オナニー済ませたら、祖国統一させてあげる!」

確かに聴こえる……。

幻聴なんかじゃ無い。

誰も分かってくれない。

(俺は正常だ!)

僕はこの謎の声の命令に、抗うすべを持っていなかった。

僕は布団の上に横になり、ズボンとパンツを、膝の下まで下した。

一物が露になった。

それは固く勃起し、大きくなっていた。

マゾの僕は、上から目線で女性に命令されると、強く性的興奮を覚える。僕は、美人看護師のお姉さんに、厳しく叱責されているところを想像して、激しく一物をしごいた。いつ病室の中に、看護師が入ってくるかも知れないのに、そんなことはお構いなしで、オナニーに励んだ。

「う!あ!出る!」

僕は三分もしない内に、果ててしまった。白濁した精液が、Tシャツに掛かってしまった。僕は精液の後処理もせず、ただ天井をぼーっと見つめていた。

(僕は一体、どうしてしまったんだろう……)

(何故、こんな所に居るんだろう……)

(頭がおかしくなってしまったんだろうか……)

この時僕は、まだ自分が病気だとは、思っていなかった。

そう、全く病識が無かったのである。

この統合失調症という病気は、病識が無いのが大きな特徴である。

僕は在日韓国人三世で、小、中、高校と民族学校に通った。そのため愛国心が強く、いつも祖国統一を願っていた。祖国統一の為、微力ながらその一翼を担うことができるなら、これ以上素晴らしいことは無いと、常日頃から思っていた。

この様な思いが強いため、僕は日本国政府が僕を利用して、北朝鮮と韓国を日本の国益に有利になる様に統一させるため、近隣の住民たちを利用して、僕に圧力を掛けていると思い込んでいた。だから、保護室の外から例の謎の命令が聴こえてきた時は、日本国政府が池田病院にまで、手を伸ばしてきたと思った。

この時、僕の精神は完全に壊れていた。

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