ここ三階閉鎖病棟の住人たちが、皆、心待ちにしている日がある。
それは毎週月曜日の、「お菓子の日」である。
毎週月曜日の午後二時、三階の食堂に、お菓子屋が出張に来る。
チョコパイ、ビスケット、クッキー等、色とりどりのお菓子がテーブルに並び、患者たちは好きなものを好きなだけ買える。
食事の量が少ない、ここ池田病院において、お菓子は貴重な食糧源であった。
このお菓子の日に、俄然、存在感を発揮するのが、超甘党の森慎二さんである。
毎回、販売開始二時間前から、列の最前列に並んで、午後二時が来るのを、今か今かと待ち構えている。
僕は大抵、森さんから少し遅れを取って、四番手か五番手である。
森慎二さんは、毎回大量のお菓子を買い込んで、自分のロッカーに保管していた。
そのため、鈴木圭吾さんや坂上直人君、堤勇太さんら、ハイエナBIG3から、狙われることが度々あった。
よく夜九時の消灯後、堤さんが森さんの部屋に行って、寝ている森さんを起こして、
「ねえ、森さん、俺、腹減ったよ!ロッカーの中のお菓子、ちょっとちょうだい!お願い!」
と、ねだっていた。
(お気の毒、森さん……森さんの未来に幸あれ……)