神経質症の種類
1 普通神経質:不眠症、頭痛頭重、頭内もうろう、感覚異常、疲労亢進、能率減退、劣等感、小心取越苦労、性的障害、眩暈、書痙、耳鳴、記憶不良、注意散乱など
2 強迫観念:対人恐怖、不潔恐怖、疾病恐怖、不完全恐怖、読書恐怖、卒倒恐怖、外出恐怖、吃音恐怖、罪悪恐怖、縁起恐怖、尖鋭恐怖、雑念恐怖、高所恐怖、せんさく癖など
3 発作性神経症:心悸亢進発作、不安発作、呼吸困難発作など
神経質症状の発生および固着の機転
1 「精神交互作用」~これは、我々の心身の現象に不安な注意を向けると、それがますます鋭く感受される、そうするといよいよそこに注意を向けて、悪循環を来すことを意味する。
2 「精神拮抗作用」~これは自己の心身の現象を自己保存上不利のもの或いは不快なものとして、これを排斥するとか否定しようとかする態度である。
3 「思想の矛盾」~このことは「かくあるべし」という思想と「かくある」という事実との矛盾を意味するもので、前述の精神拮抗作用と同質のものと見て差し支えない。
4 「自己暗示」
神経質症状の主観的虚構性
神経質症者は自己に関して、冷静にあるがままに客観視することが困難である。これは患者の心気的気分によって、その判断が彩色され歪曲されることに他ならない。それ故に患者の訴える症状の内容が、事実と著しく異なっていることが多い。しばしば医師も患者のこの虚構性に乗ぜられて、治療の方針を誤ることがある。治療に際しては、医師はこのことに留意していなければならない。
みせかけの「防衛単純化」
元来適応不安は何人にもありうるものであるが、普通人においては通常この不安は一定の対象に局限されていない。しかし神経質症の場合には、不安感情が一定の対象を指向する傾向が強く現れる。何故かといえば、一定の対象のない不安を処理することはその手掛かりを欠くことの故に困難であるように思われる。敵があまりにも多すぎる。
そこで作戦として、敵を一つに絞ってしまうことが有利のように思われる。そこである一定の事柄を自己保存上もっとも有害不利のものときめて、これを排斥するという防衛機制が生まれる。これを「防衛単純化の機制」と言う。
これにより一つの対象に不安が指向され凝縮すると、ここに対処すべき簡単明白な目標が出来、これさえ無ければ安心して十分に活動できると考えるが、事実はそのために森田のいわゆる思想の矛盾、精神交互作用、拮抗作用、自己暗示をきたして、持続的な神経質症状を形成するのである。すなわち「防衛単純化」はみせかけにすぎないもので、事実はかえって煩雑なからくりを招来するのである。
「あるがまま」ということ
「あるがまま」の第一の要点は、第一に症状或いはそれに伴う苦悩不安をそのまま素直に認め、それに抵抗したり、反抗したり、あるいは種々の手段をこうじてごまかしたり、回避したりしないで、まともに受け入れることである。
第二の要点は、症状をそのまま受け入れながら、しかも患者が本来持っている生の欲望に乗って建設的に行動するということで、これが単なる「あきらめ」と異なるところである。症状に対してもあるがままであるとともに、「向上発展」の欲望に対してもあるがままである。
ー参考文献ー
高良武久著作集2 高良武久