入院闘病記(閉鎖病棟) PR

入院闘病記(閉鎖病棟) 缶コーヒー 第13話

三階閉鎖病棟の食堂の隅に、一台の自動販売機が置かれている。

赤茶色の錆びた、その大きな四角い箱は、もう何十年もそこに置き捨てられたかのように、静かに立っていた。

僕たちはその自動販売機で、よく缶コーヒーを買って飲んだ。

缶コーヒーは、僕にとっての生命線だった。

缶コーヒーを飲んで、カフェインを体内に摂取することにより、意識が覚醒され、気分が高揚して来る。

僕は完全に、カフェイン中毒になっていた。

どうやらそれは、僕だけでは無いようだった。

皆、とりつかれたように、自動販売機で缶コーヒーを、買っては飲んでいた。

皆、缶コーヒーを飲んで、ハイになっていた。

僕は、朝、昼、夕と、一本ずつ缶コーヒーを飲み、計画的にカフェインを体内に摂取していた。

皆、缶コーヒーにはまっていた。

皆、缶コーヒーにとりつかれていた。

皆、缶コーヒーに頼っていた。

僕は人目を忍んで、缶コーヒーを買った。

何故なら、買っている所を皆にバレると、蟻が砂糖に群がる様に、

「一口ちょうだい!一口ちょうだい!」

と、皆が寄ってくるからだ。

油断大敵である。

ハイエナたちに、狙われたら最後である。

僕の一番のお気に入りは、「ジョージア マックスコーヒー」だ。

疲れた時に超お勧めなのが、このコーヒーだ。

このコーヒーは、練乳と牛乳の合わせ技を使って、異次元の甘さを演出している。

一口飲んで、

「甘い!」

と、なるはず。

疲れた時って体は、甘いものを欲するものだ。

僕の中では疲れたらマックスコーヒー、という方程式が成り立っている。

うむ!

一口で缶コーヒーと言っても、底知れぬ奥深さがある。

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