僕は空き時間、読書に励んだ。
何かにとりつかれたように、本を読んだ。
本は僕の心を、癒してくれた。
僕は本の中に、救いを求めた。
本は僕の全てを、無条件で受け入れてくれた。
僕を罵ることもなければ、イジメることもなかった。
僕は現実の世界から、本の中の世界に逃げた。
夜九時の消灯後も、廊下の薄明りの下で、本を読み続けた。
僕が心を惹かれた作家は、村上春樹だった。
僕は寝食を忘れて、村上春樹の本を、読み漁った。
村上春樹の本は空想的で夢があり、論理的に話が進んでいく。
僕は、夢中になって読んだ。
かなり、エロティックな表現が多く、僕は勃起しながら読んだ。
ページを繰る度に、どんどん村上ワールドに、引き込まれていく。
村上春樹の文章を読むと、心が癒されて、嫌なことを忘れてしまう。
結局僕は、退院して実家に帰ってからも、村上春樹を読み続け、全巻制覇してしまうことになる。
僕にとって読書は、ここ閉鎖病棟において、正気を保つための唯一の手段であった。
本の中には、全く新しい世界が広がっている。
旅行に行けなくても、本を読めば、心の中で旅することができる。
本は僕の、唯一の救いだった。
書物の新しいページを一ページ、一ページ繰るごとに、僕はより広く、より強く、より大きくなっていく。
僕は、本を読みながら考えた。
(何で私は、こんな所に居るんだろう?)
(どうしたらここから、抜け出すことが出来るんだろう?)
答えは、なかなか出なかった。